回転する流体内部の粒子は中央に集まります。ビール製造工程で凝集物(ホップかす)とビールを分離するワールプールタンクはこの原理を応用しています。図は日本ビール検定公式テキスト(監修 日本ビール文化研究所)にある、ワールプールタンクの説明図です。右下の「上から見た図」がわかりやすいです。
写真1はキリンビール工場でビールをつくった時の様子です。ワールプールタンク内をおおきなヘラで攪拌しています。タンクの中で麦汁がグルグルと回転しているのがわかります。
写真2は攪拌後に下からビールを排出した後の様子です。中央に凝集物が集まっていますね。回転している流体の中にある粒子(凝集物)は、重たいので遠心力で外側に移動するはずなのに不思議です。さっそくシミュレーションで解析してみましょう。
フリーの流体解析ソフト(OpenFOAMのmultiphaseEulerFoam)を改良して計算しました。0.5秒攪拌した後、放置します。遠心力で外側に向かった流れは、ふちの水面を上に持ち上げているのがわかります。また円周部分の圧力が高くなります。一方底は壁と流体の摩擦によって流れが弱くなるため圧力が小さくなります。この圧力差で上部の液体は下に流れ、次に中央に向かってながれて再び上昇し、循環する流れを形成します(2次流れ)。実際には回転しながら流れるため螺旋状に流れます。粒子(凝集物、動画では赤で表示)は一旦は遠心力で底の外側に集まりますが、2次流れによって最後は中央に寄せ集められます。
流線表示してみました。凝集物はこの線に沿って移動します。
下の図は攪拌を停止してから約2秒後の流線を1本だけ表示したもの(静止図)です。周囲から中心に向かって螺旋状の流れができているのがよくわかります。凝集物はこの流れによって中央に集められます。面白いですね。
居酒屋で実験をしてみました。灰皿に水と生姜(凝集物やホップの代わり)を入れて軽く回転させてみます。中央に生姜が集まってきます。
回転前と回転後を比較すると、確かに中央に生姜が集まっています。簡単に実験できるので是非やってみてください。
●おまけ1:3Dゴーグル用に動画を作成しました。
●おまけ2:ネットで探したら、2次流れの詳しい説明と面白い動画がありました。なるほどです。
http://www.jsme-fed.org/experiment/2012_4/003.html
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