ウィスキーの香りの拡散を計算してみよう

先日とあるお店で1920'sブレンダーズグラスでスコッチウィスキーを飲んだところ、飲む瞬間の香りが素晴らしくてびっくりしました。ウィスキーの香りももちろん素晴らしいのですが、鼻を近づけた瞬間の香りの強さにビックリしました。 そこでウイスキーの香りたちあがる様子をシミュレーションしてみました。まずはグラス形状を一緒に写真に写した親指の爪の長さから推定します。

 次はメッシュを作成するためにstlファイルを作成します。推定した形状をもとにしてfreeCADで2次元形状をつくって360度回転させて3次元形状にしました。グラスの底から1cmの高さにウイスキーの上の面を設定します。  


香りが拡散していく領域も必要なので、600mmx600mmx350mmの立方体も追加します。

次にcfMeshでメッシュ分割します。図は断面のメッシュを表示していますが、実際は3次元でメッシュ分割しています。

次は境界条件の設定です。解くべき方程式は濃度Cに関する拡散方程式なので、濃度に対して境界条件を設定していきます。熱力学的な準静的な状態と仮定し、ウィスキー表面は香り分子が飽和濃度(C=C1)になっていると考えます。一方グラスから十分に遠い地点(計算領域の外側)は香り分子が存在しない(C=0)と考えられます。濃度のとるべき範囲は0~C1ですが、これを0~1と変換します(C1による規格化)。これは拡散方程式が線形だから可能なテクニックで、非線形だとこれはできません。よってウイスキー表面の濃度はC=1とします。本当は計算領域の外周はC=0にすべきですが、拡散はグラス直径の200倍くらいの範囲まで広がる可能性があるのですが、ここではグラスから300mmの範囲しか計算しないため、計算領域より外にも香りが広がっていいようにgradC=0(ノイマン境界)を設定しました。厳密にはダメですが、まあ大丈夫でしょう。


計算はopenFOAMの基本ソルバーであるlaplacianFOAMを使います。香り分子の拡散係数はD=2.5e-5 [m2/s] としました。気体中の分子はだいたいこんなもんでしょう。さて計算結果です。60秒経過するとグラスから香りがあふれてくるのがわかります。赤いところが香り分子がたくさんあるところです。グラスの中に香り分子が充満しているのがわかりますね。

麦酒物理研究所

麦酒物理研究所 ーBeer Physics Reserch Center- フリーのシミュレーションツール(OpenFOAM)をつかっていろいろと解析してみます。初めてのホームページ作成なので、なかなかはかどりませんが、気長に更新していきます。勘違い、間違いがあるかもしれません。ご意見、コメント歓迎します。

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