ギネスカスケードを計算するためには、泡の直径がわからないと計算できません。ギネスビールの泡が細かいことはわかりますが、どのくらいか具体的な値は想像もつきませんでした。そこでネットや文献を調査してたのでここにまとめてみます。間違いもあるかもしれません。今後も研究を進めていきます(笑)
1 泡の発生
まず泡の誕生から考えて見ます。液体よりも気体になったほうが自由に動き回れるので安定です。ビールの中の気体分子(二酸化炭素や窒素)は、チャンスがあれば泡となって自由に動き回りたがっています。一方、気体は液体と接する表面積が増えるほどエネルギーが大きくなり不安定となります。つまり泡のエネルギーは、体積が増えるほどマイナス(安定)、表面積が増えるとプラス(不安定)になるわけです。気泡が球形の場合には、泡のエネルギーは式(1)となります。そしてできるだけエネルギーが小さくなるように泡は変化していきます。
G=-(泡の体積)・△G+(泡の表面積)・γ 式(1)
∆G:液体から気体に変化した場合の単位体積あたりの自由エネルギー変化量でです。ΔGはビールの栓を抜く前の圧力(すなわち炭酸ガスの飽和圧力)-ビールの栓を抜いた後の圧力(すなわち大気圧=1気圧)になるようです。常温で炭酸ガスを溶け込ませるのには約2.5気圧必要としましょう。△G=2.5-1=1.5気圧 ~ 1.5x10^5[Pa・m^3]となります。
炭酸ガスとビールの界面エネルギーは表面張力と同じ値なので、0.03~0.05N/mくらいでしょう・・多分(ちなみに水は0.07)。これで半径と気泡エネルギーを計算すると図のようになります。
エネルギーは高いと不安定なので、グラフの頂点が一番不安定な状態です。界面張力エネルギーが0.05の場合は半径7e-7[m]=0.7um。直径だと1.4umとなり、およそ1ミリの14/10000です。1.4umよりも小さい気泡は、さらに小さい方が安定なので、周囲の液体に溶けて消えてしまいます。1.4umよりも大きな気泡はさらに大きい方が安定なので、ビール中に溶けている気体(二酸化炭素や窒素)を取り込んで成長していきます。生まれた時の大きさで、その後成長するか、消滅するか、運命が決まってしまうわけです。すくなくともビールの泡は約1um以上。これよりも小さい泡は無視してもいいと思われます。
グラフのピーク高さは界面エネルギーが0.05よりも0.03の方が低いので、エネルギーの壁を乗り越えやすいことがわかります。モルトやホップをふんだんに使ったビールは、両親媒性分子が沢山あるため界面エネルギーが低くなり、クリーミーな泡が沢山できやすいのではないかと思います。
参考
・△Gについて
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1464057259
2 気泡の成長
通常のビール(例えばピルスナー)には二酸化炭素(CO2)が溶けています。二酸化炭素は水に溶けやすいのでたっぷりあります。通常のビールで2.7GV=約5400ppmくらいだそうです。生まれたての時は約1umだった泡は、周りの二酸化炭素を吸収してどんどん成長し、100um(0.1mm)~200um程度に成長します。一方ギネスビールは二酸化炭素ではなく、窒素で缶や瓶にビールを封印します。ギネスにも二酸化炭素も溶けていますが、その量は通常のビールよりも少ないようです。窒素は40~50ppm、二酸化炭素は2GV(約4000ppm)くらいです。そのためギネスの気泡はあまり成長せず50~60umくらいです。ちなみにビールの温度が低いと気泡は成長しにくいため泡は小さくなるそうです。アサヒスーパードライのエクストラコールドはマイナス2度で泡の大きさが60umとのことなので、ギネスビールのようなクリーミーな泡になるようです(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37354)。
結論:ピルスナーの気泡は平均100um、ギネスは平均60um。次回はこれでシミュレーションしてみましょう。
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